すべては地球「土の劣化」が原因

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どれくらいの微生物が活動しているか意識してみてほしい。 実は、ひと握りの土の中(約30g)には、地球の全人類よりも遙かに多くの微生物が存在する。指先にのるたった1グラムの土には最大100億の微生物たちが働き、これらの生命体は土中の有機物を処理し、植物が必要とするカタチの栄養に変換している。おにぎり一個分(約110g)ほどの土には、最大1兆1,000億の微生物が人知れず働いている計算です。見渡す農地で活躍する微生物に意識を向けると、数の単位が想像できない程。結論として我々は、微生物たちの活動を通して、土中に生み出された養分を取り込んだ植物を食べ、生きている。
人類活動の中で、最も自然界を変えるのは農業です。近代農業では、化学肥料と窒素肥料が発達。土壌の手入れをしなくても収穫は途絶えない、と誤解される程に。自然の摂理(土壌の仕組み)を理解せず、とにかく大量の薬品を土に投入する、その量はどんどん増えていった。こうして土の劣化は、化学肥料でずっと隠されてきた。そして、土壌が弱れば、農家は農薬を使うという習慣が身に染みている。この「悪循環」はもう限界です。地球が悲鳴をあげている。そう、近代農業では、土壌の改善を目指していない。私たちは約100年、農薬で土の微生物を殺してきた。もちろん、そんな気は無かったと言うはずです。既に日本の農地では、土中に微生物が<未検出>という農地が出ている。
土を劣化させる有害物質はまず土壌に入り、水に入り、人体に入る。そして、多くの殺虫剤と除草剤は母乳を通して赤ん坊に摂取される。身体に取り込んだ農薬は、胃腸の微生物に影響を及ぼす。200以上の査読付き論文で、農薬散布と健康被害(注意欠陥障害、小児ガン、先天性疾患等)の相関関係が主張されている。
戦争で史上初の化学兵器として使われ、その後、製薬会社がその毒を殺虫剤として農家に売り出したという歴史を知れば当然です。現在では、米国民一人につき1.36kgの有害物質が食べ物に付着し、日本人の体内には年間8kgもの化学物質が蓄積されると言われている。農薬は土壌微生物を殺すのと同様に人体の微生物を滅ぼす。2017年のデータでは、日本での農薬使用量(1ヘクタールあたり)は、米国の4倍をゆうに超えている。
70年代から全世界での農薬使用が増えてから、地球の表土の1/3が失われた。
化学肥料を土壌に過剰投下してきた私たちの約100年間の経済生産活動によって、全世界の現役農地約34%(約16億6,000万ヘクタール)が既に土壌劣化に瀕しています。
土壌劣化の進行速度は深刻です。その速度は、毎5秒ごとに「サッカーフィールド一面の土壌が失われる」スピードで進んでいます。そして、豊かな表土を形成するには数千年の歳月が必要であるにも関わらず、地球表土の約90%が2050年までにリスクにさらされると予測されています。
総合すると私たちの地球では、日本国3つ分(約2.7倍)に相当する、毎年約1億ヘクタールの健康的で生産的な土地が砂漠化、干ばつ、土地劣化のために地球から失われています。(直近2015年~2019年統計)
世界の表土に入る化学肥料は、年間約1億4,000万トン。それらは、土の酸化や重金属の堆積を着実に推し進め、土着微生物が住めない環境へ土を変化させている。結果、現在では年間約190億トンもの二酸化炭素が、世界の農地から大気へと排出されている。ぜんぶ、人類のやってきたことです。
健康な土壌は水と二酸化炭素を吸う能力がある。しかしながら、土壌が傷つけられると二酸化炭素が大気に放出さる。そして、保水力が失われ、乾燥した土が土ぼこりになる。これが、砂漠化です。現在、地球の陸地約66%が砂漠化の危機に瀕しています。地球では、増え続ける世界人口を抱える一方で、急激な砂漠化が進行している。砂漠化は、我々の生命を支える農地の喪失を意味する。
砂漠化し植物がなくなければ、大地に蒸発が起きる。大地の温度は急上昇し、熱風の渦が発生、雨雲を他へ追いやる。こうして、水の循環を人類が破壊している。世界の2/3が砂漠化しており、2050年には10億人が砂漠化による難民となる。地球全体を左右する破壊が目の前まで迫っている。国連によれば、地球の表土は60年以内に完全消滅。つまり、土壌を救う手段を見つけなければ、あと60回しか収穫ができない。
「微生物の活用が進んでいるのは、現代の農業が化学肥料をどれだけ使っても、作物の収量を増やすのが難しくなっているからです。これまでは農薬や化学肥料ですべての虫や菌を殺してきました。しかし、より効果的なのは殺すのでは無く、虫や微生物を増やすことだと分かってきました。」
微生物活性土壌には、その重量の27倍もの水を蓄えられる優れた保水能力がある。土壌からこの環境が失われていくと、土は乾燥し砂漠化が進んでいきます。故に、風に乗って黄砂が巻き起こったり、干ばつが発生したり、日光によって急速に水分が奪われ、雨雲となって豪雨を引き起こすなど、深刻な気候変動を地球に生み落とす。
エジプト・カイロのセケム農場は、砂漠のど真ん中の農園です。そこでは土壌を再生することで、砂漠化された土を農地へ転換し、砂漠地帯で果物が実り豊かな緑がひろがっている。この奇跡のオアシスの秘密は、歳月をかけ、砂漠におよそ30cmの厚みの微生物活性土壌層を生成、微生物の生命環境を作ったこと。土本来の高い保水能力を機能させ、砂漠地盤層への雨水や放水の浸食を防ぎ、緑の土地へと再生させた。
ファイトレメディエーション(phytoremediation)という言葉がある。それは、植物が根や気孔から水や養分を吸収する能力を利用し、土や地下水、大気の汚染物質を吸収し分解する技術。1986年に起こった世界最大のチェルノブイリ原発事故では、ファイトレメディエーションを期待した実験も行われた。近年イタリアのプーリア州タラントにある農家は、大規模な鉄鋼工場からの荒廃した残留金属汚染に対抗するため、土壌に大麻作物を植えている。土着微生物と相性が良く、劣化した土を再生する植物が、地球には存在する。農薬の弊害である亜硝酸窒素、重金属・軽金属ほか汚染有害物質の吸着が期待されている。
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