すべては地球「土の劣化」が原因

©Kiss the Ground 大地が救う地球の未来 (2020)
土壌
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土壌再生が気候変動を止める

解決策は足下にある。そう、土です。大地が大量のCO2を閉じ込めることができることは余り知られていない。実は、健康な土壌が地球の気候を安定化させる唯一の存在。我々に水を与え、世界に食物を与える大地を救えば、我々の直面している多くの問題は解決する。生命を支える母なる土壌について、我々はあまりにも、その仕組みを知らない。

大地が我々を救う

二酸化炭素吸収
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「土壌の仕組み」が再生の鍵

仕組みを知る前に、土という舞台には二人の役者がいることを覚えておいてほしい。それは、植物と土壌微生物。二人の物語がどんなに相愛なものかお伝えします。植物は、宇宙からの太陽光エネルギーを使い、大気中の二酸化炭素を吸収する。そして、植物は自ら成長に必要なエネルギー(炭素化合物)をつくり出す。ここで大事なのは、そのエネルギーを全部自分のものにしないこと。その60%を活用し、植物は根を通じて、残り40%を土壌微生物たちに分け与える。受け取った微生物たちは、植物のために様々な働きをお返しする。例えば、受け取ったエネルギーを使って、微生物は死んだ植物や動物の有機物を分解しながら、植物が大好きな窒素・カリウム・リンをはじめとするミネラル養分を、植物の根の、必要な場所に正確に与え返す。それだけではなく、微生物たちは、粘着性の炭素化合物(グロマリン)を生み出しながら、土中に穴をつくり、空気と水の流れを操る。それにより、炭素が土壌に定着していく。つまり土壌は、植物と微生物の会話によって、大気中の二酸化炭素を土に閉じ込める力を持つのです。

「土壌は生きている」

土壌の仕組み
土壌の生物
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ひと握りの土に

どれくらいの微生物が活動しているか意識してみてほしい。 実は、ひと握りの土の中(約30g)には、地球の全人類よりも遙かに多くの微生物が存在する。指先にのるたった1グラムの土には最大100億の微生物たちが働き、これらの生命体は土中の有機物を処理し、植物が必要とするカタチの栄養に変換している。おにぎり一個分(約110g)ほどの土には、最大1兆1,000億の微生物が人知れず働いている計算です。見渡す農地で活躍する微生物に意識を向けると、数の単位が想像できない程。結論として我々は、微生物たちの活動を通して、土中に生み出された養分を取り込んだ植物を食べ、生きている。

土中に生み出された養分
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我々は土の中の成分を​
取り込んだ植物を食べる​

土壌微生物
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我々人類は
土中の微生物ともつながっている

土壌微生物
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砂漠化の原因、近代農業

人類活動の中で、最も自然界を変えるのは農業です。近代農業では、化学肥料と窒素肥料が発達。土壌の手入れをしなくても収穫は途絶えない、と誤解される程に。自然の摂理(土壌の仕組み)を理解せず、とにかく大量の薬品を土に投入する、その量はどんどん増えていった。こうして土の劣化は、化学肥料でずっと隠されてきた。そして、土壌が弱れば、農家は農薬を使うという習慣が身に染みている。この「悪循環」はもう限界です。地球が悲鳴をあげている。そう、近代農業では、土壌の改善を目指していない。私たちは約100年、農薬で土の微生物を殺してきた。もちろん、そんな気は無かったと言うはずです。既に日本の農地では、土中に微生物が<未検出>という農地が出ている。

従来どおり農薬がまかれた土壌では
微生物はほぼ存在しない

近代農業 化学肥料 農薬
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農薬で死ぬのは微生物

「窒素およびリンによる汚染」

2015年国連採択された持続可能な開発目標(SDGs)の基礎となる概念「プラネタリー・バウンダリー」(J.ロックストローム教授ほか)では、地球の限界リスクが9つ示されました。特筆すべきは、地球環境にとって最も高いリスクとして「窒素およびリンによる汚染」が科学的に確認された点です。しかも、リン鉱石を採掘して作られるリン酸肥料(化学肥料)に依存する現代農業は、あと50年から100年の間に枯渇する可能性があるリン鉱石に依存しているのです。そして、窒素とリンの過剰な使用は、農業からの流出によって川や湖沼、さらには海を汚染し、生態系への深刻な影響を引き起こしています。また、窒素は大気中に放出されると、オゾン層の破壊や地球温暖化の一因ともなります。プラネタリー・バウンダリーの概念は、これらの問題に対する厳しい管理と削減策を求めています。
プラネタリーバウンダリー
出典:Azote for Stockholm Resilience Centre, based on analysis in Wang-Erlandsson et al 2022

現代では、大半の作物が農薬に耐えるよう​
遺伝子操作される​

近代農業 化学肥料 農薬
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土の劣化は、身体の劣化

土を劣化させる有害物質はまず土壌に入り、水に入り、人体に入る。そして、多くの殺虫剤と除草剤は母乳を通して赤ん坊に摂取される。身体に取り込んだ農薬は、胃腸の微生物に影響を及ぼす。200以上の査読付き論文で、農薬散布と健康被害(注意欠陥障害、小児ガン、先天性疾患等)の相関関係が主張されている。

戦争で史上初の化学兵器として使われ、その後、製薬会社がその毒を殺虫剤として農家に売り出したという歴史を知れば当然です。現在では、米国民一人につき1.36kgの有害物質が食べ物に付着し、日本人の体内には年間8kgもの化学物質が蓄積されると言われている。農薬は土壌微生物を殺すのと同様に人体の微生物を滅ぼす。2017年のデータでは、日本での農薬使用量(1ヘクタールあたり)は、米国の4倍をゆうに超えている。

土を劣化させる有害物質は人体に入る
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農薬で死ぬのは、我々に健康を与え
炭素を吸収する
微生物

砂漠化、干ばつ、洪水、気候変動

微生物の死が、すべてを引き起こす

土壌の砂漠化
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地球を滅ぼす

70年代から全世界での農薬使用が増えてから、地球の表土の1/3が失われた。

すべての原因は「土の劣化」

土壌の砂漠化
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農地の34%が...​

化学肥料を土壌に過剰投下してきた私たちの約100年間の経済生産活動によって、全世界の現役農地約34%(約16億6,000万ヘクタール)が既に土壌劣化に瀕しています。

データ出拠:国連食糧農業機関(FAO)

5秒毎に​

土壌劣化の進行速度は深刻です。その速度は、毎5秒ごとに「サッカーフィールド一面の土壌が失われる」スピードで進んでいます。そして、豊かな表土を形成するには数千年の歳月が必要であるにも関わらず、地球表土の約90%が2050年までにリスクにさらされると予測されています。

データ出拠:国連食糧農業機関(FAO)

毎年1億ヘクタール

総合すると私たちの地球では、日本国3つ分(約2.7倍)に相当する、毎年約1億ヘクタールの健康的で生産的な土地が砂漠化、干ばつ、土地劣化のために地球から失われています。(直近2015年~2019年統計)

データ出拠:国連砂漠化対策条約 (UNCCD)
土が二酸化炭素を排出する側へ
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土が二酸化炭素を排出する側へ

世界の表土に入る化学肥料は、年間約1億4,000万トン。それらは、土の酸化や重金属の堆積を着実に推し進め、土着微生物が住めない環境へ土を変化させている。結果、現在では年間約190億トンもの二酸化炭素が、世界の農地から大気へと排出されている。ぜんぶ、人類のやってきたことです。

データ出拠:地球を救う忘れられたチャンス「腐植土」

土が再生されれば...

土壌が二酸化炭素を吸収
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砂漠化の危機

健康な土壌は水と二酸化炭素を吸う能力がある。しかしながら、土壌が傷つけられると二酸化炭素が大気に放出さる。そして、保水力が失われ、乾燥した土が土ぼこりになる。これが、砂漠化です。現在、地球の陸地約66%が砂漠化の危機に瀕しています。地球では、増え続ける世界人口を抱える一方で、急激な砂漠化が進行している。砂漠化は、我々の生命を支える農地の喪失を意味する。

地球の砂漠化
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地球の水の循環

砂漠化し植物がなくなければ、大地に蒸発が起きる。大地の温度は急上昇し、熱風の渦が発生、雨雲を他へ追いやる。こうして、水の循環を人類が破壊している。世界の2/3が砂漠化しており、2050年には10億人が砂漠化による難民となる。地球全体を左右する破壊が目の前まで迫っている。国連によれば、地球の表土は60年以内に完全消滅。つまり、土壌を救う手段を見つけなければ、あと60回しか収穫ができない。

世界各地の20以上の文明は
農業で自然を破壊した結果

滅んだ

植物と微生物
そして
気候と文明は連動している

地球の水の循環
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CO2を吸収する方法は土壌 土へ返そう

土壌は大気の6倍以上CO2を吸収

産業革命が起きた1750年以降、1兆トンつまり1,000GT(ギガトン)の炭素を人類は大気に排出してきた。「排出量を減らす」試みだけではもう十分とは言えない。鍵は、大気と植物が蓄えられるCO2の合計より遙かに多い量を、土壌は保有できること。ここにしか「解」はない。土壌は、大気の吸収力(600GT)の約6倍(4,000GT+)以上、植物の吸収力(1,100GT)の約4倍、CO2を吸収保有できる。現在では、土壌からCO2が排出され、大気に移動している。その最大の理由は、近代農薬による「土」の劣化、微生物の死だ。

土壌の微生物は炭素で生きるのだから

土壌は大気と植物の2倍二酸化炭素を貯留
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健康な土壌は水と二酸化炭素を吸う

我々がこの星を守る

土壌を回復できれば、地球は回復する。それには「土壌の仕組み」を知り、植物の育て方をまるっきり変えること。これまで無視されてきた土中の微生物たちに、働いてもらう環境をつくること。微生物が複合的に活性する土壌では、水の循環が戻り、恵みの雨が降る。そう、数えられないぐらい沢山(八百万)の多様な微生物のいのちたちが、土の中で人知れず連携し合い、生命の連鎖という小循環と、地球環境の連鎖という大循環を結びつけている。土壌の仕組みを取り戻す技術(培養水や培養土など)が生まれ、実験がはじまっている。

「微生物の活用が進んでいるのは、現代の農業が化学肥料をどれだけ使っても、作物の収量を増やすのが難しくなっているからです。これまでは農薬や化学肥料ですべての虫や菌を殺してきました。しかし、より効果的なのは殺すのでは無く、虫や微生物を増やすことだと分かってきました。」

デイビッド・モントゴメリー教授(ワシントン大学)

最も有効なテクノロジーは
植物の光合成と
土壌微生物の活動だ​

肥沃な土壌 新芽
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微生物の働きに意識を向ける取り組みコンセプト「八百結び」。我々が傷つけた自然を修復する。有志の叡智を結集したリジェネレーション・プロジェクトが、今この地球に必要です。

土が変われば、世界が変わる

肥沃な土壌
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土本来の保水力

微生物活性土壌には、その重量の27倍もの水を蓄えられる優れた保水能力がある。土壌からこの環境が失われていくと、土は乾燥し砂漠化が進んでいきます。故に、風に乗って黄砂が巻き起こったり、干ばつが発生したり、日光によって急速に水分が奪われ、雨雲となって豪雨を引き起こすなど、深刻な気候変動を地球に生み落とす。

砂漠に農地が生まれる

エジプト・カイロのセケム農場は、砂漠のど真ん中の農園です。そこでは土壌を再生することで、砂漠化された土を農地へ転換し、砂漠地帯で果物が実り豊かな緑がひろがっている。この奇跡のオアシスの秘密は、歳月をかけ、砂漠におよそ30cmの厚みの微生物活性土壌層を生成、微生物の生命環境を作ったこと。土本来の高い保水能力を機能させ、砂漠地盤層への雨水や放水の浸食を防ぎ、緑の土地へと再生させた。

プロジェクト創始者:イブラヒム・アボレイシュ氏(オルタナティブ・ノーベル賞受賞者)
データ出拠:地球を救う忘れられたチャンス「腐植土」
砂漠に農地が生まれる

人類はどちらの未来を
子供たちに残すつもりなのか​

土を再生させる植物「麻」

土を再生させる植物「麻」

ファイトレメディエーション(phytoremediation)という言葉がある。それは、植物が根や気孔から水や養分を吸収する能力を利用し、土や地下水、大気の汚染物質を吸収し分解する技術。1986年に起こった世界最大のチェルノブイリ原発事故では、ファイトレメディエーションを期待した実験も行われた。近年イタリアのプーリア州タラントにある農家は、大規模な鉄鋼工場からの荒廃した残留金属汚染に対抗するため、土壌に大麻作物を植えている。土着微生物と相性が良く、劣化した土を再生する植物が、地球には存在する。農薬の弊害である亜硝酸窒素、重金属・軽金属ほか汚染有害物質の吸着が期待されている。

土の性能を強化する「麻」
麻を植えれば
莫大な炭素を、微生物と共に土壌に返せる

傷ついた大地を回復すれば
人類は楽園に戻れる。

我々は挑む
君も諦めないでほしい

地球最後のプロジェクト

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