午前5時。都市の喧騒がまだ目覚めぬ時間帯。夜明け前の霞がかった空気のなか、一人の男が静かに芝の上に立つ。彼の手にあるのはマイクでも経典でもなく、一本のパター。ヒップホップと仏教とゴルフ──一見、異なる次元に存在するこの三つの世界を、彼は一つの流れとして生きている。「ラップも、仏教も、ゴルフも、“今ここ”にいることがすべて。未来や過去にとらわれてたら、芯を食ったショットも、いいライムも出ない」そう語る彼の朝は、呼吸と沈黙とグルーヴに包まれている。自己を解放し、意識を鎮め、空間と一体化するような朝練──それはスポーツのトレーニングではなく、一種の“行”に近い。