“ティーオフ前の祈り”──大麻とメンタルヘルス ゴルフと静寂、そして内なる対話のためのグリーン ゴルフは、沈黙のスポーツである ゴルフの一打には、言葉にならない時間が宿る。目の前に広がるグリーン、静まり返るフェアウェイ、遠くで鳴く鳥の声。クラブを握る手に汗が滲み、心拍がわずかに早まる。そしてティーグラウンドに立った瞬間、すべての音が内側へと沈んでいく。その一瞬に、どれだけ心を鎮められるか。ゴルフとは技術以上に、精神の安定と向き合う競技なのだ。 プロゴルファーたちが密かに頼る“精神の助け舟” ツアーの長期遠征、プレッシャー、SNSからの批判、契約更新の不安──現代のプロゴルファーたちは、目に見えないストレスと日々戦っている。一流選手たちが“メンタルコーチ”や“瞑想アプリ”を取り入れるのは、もはや常識となった。そして今、そのメンタルケアの選択肢に、「大麻(THC)」や「CBD」が加わろうとしている。 THCがもたらすのは“酩酊”ではなく“静けさ” 一般的に“大麻”と聞くと、陶酔感や逃避のイメージが先行する。だが、ごく少量のTHCはむしろ、神経の興奮を鎮め、不安を和らげる効果があるとされる。あるツアープロは匿名でこう語る。「予選落ちが決まったあとの日曜ラウンドで、少しだけTHCを摂った。すると、目の前の木々や風の流れまでがゆっくり感じられた。打ちたい場所に打つだけ。その一打が、静かに整っていた。」それはまさに、“祈り”に近い状態だったのかもしれない。自分を責めず、未来を恐れず、ただ「今この一打」と向き合うための時間。 CBDと「準備の儀式」 一方、CBDはTHCのような陶酔作用を持たないが、神経系のバランスを整えることで知られている。バッバ・ワトソン、ビリー・ホーシェル、モーガン・ホフマンといった選手たちは、CBDオイルやガムをプレー前のルーティンとして取り入れている。クラブを磨く。グローブを締める。深呼吸をする。CBDを摂る。これらすべてが、ティーオフ前の“祈りの所作”の一部なのだ。そこに迷いはなく、あるのは自分との対話だけ。 スコアでは測れない、もうひとつの“成果” 競技ゴルフの世界では、スコアがすべてだ。だが、そのスコアを生み出す“心の安定”こそ、最も見えにくい勝利条件である。大麻が与えてくれるのは、スコアアップの魔法ではない。それは、呼吸を取り戻すための道具であり、感情のバランスを回復する“揺りかご”のような存在だ。人生に疲れたアスリートが、“自分の感情を罰しない方法”として選ぶのは、決して弱さではない。それは、傷つかずにプレーを続けるための、自分なりの智慧なのだ。 ティーグラウンドは、祈りの場所になりうる もしあなたが、ラウンド前に胸の奥にわずかな緊張や焦りを感じるなら──それは、上手くなりたい、成長したいという意志の表れだ。だがその意志に押しつぶされそうな時、大麻が静かに支えてくれることがある。大麻は薬か、リラックスか、それとも「現代の祈り」か。その答えは人それぞれだ。だが、今ゴルフという孤独な競技の中で、静けさを求めるすべての人の前に、グリーンは平等に広がっている。