ロバート・F・ケネディ・ジュニア(RFK Jr.)は、2024年アメリカ大統領選に無所属で出馬し、既存の政治体制に対する挑戦者として注目を集めている。その中でも特に物議を醸しているのが、彼のワクチンに関するスタンスだ。メディアや政治的な対立勢力は彼を「反ワクチン活動家」と呼ぶが、RFK Jr.自身は「私はワクチンに反対しているのではない。私が問題視しているのは、ワクチンを製造し、推進する巨大製薬企業(ビッグファーマ)と、その腐敗した構造だ」と明確に主張している。
では、彼が本当に反対しているものは何なのか?
「私はワクチンの科学を否定しているのではない」
RFK Jr.は、弁護士として環境問題に取り組んできた経歴を持ち、科学的な視点を重視する人物だ。彼は決してワクチンそのものを否定しているわけではなく、むしろ「安全で効果的なワクチンは必要だ」と認めている。しかし、現在の製薬業界と規制当局の関係性に大きな問題があると考えているのだ。
「本来、ワクチンは公衆衛生を守るためのものであり、政府の規制機関は国民の安全を最優先にすべきだ。しかし、現在のシステムでは、製薬会社が莫大な利益を上げる一方で、ワクチンの安全性に関する適切な検証が行われていない」と彼は主張する。
特に、RFK Jr.が批判しているのは次の3点だ。
1. 製薬企業と規制当局の癒着
アメリカでは、食品医薬品局(FDA)や疾病予防管理センター(CDC)がワクチンの承認や推奨を行っているが、これらの機関の多くの職員が製薬会社と深い関係を持っている。退職後にビッグファーマに再就職する「回転ドア」問題が指摘されており、規制当局が独立した判断を下しているとは言い難い。
2. 臨床試験の透明性の欠如
RFK Jr.は「現在のワクチン承認プロセスでは、長期的な影響や副作用について十分な試験が行われていない」と警鐘を鳴らしている。特に、新型コロナウイルスのワクチンは異例の速さで承認され、大規模な人体実験のような形で接種が推奨されたことを問題視している。
3. 法的責任の免除
1986年、アメリカでは「国家ワクチン傷害補償プログラム(Vaccine Injury Compensation Program)」が設立され、ワクチンによる副作用や健康被害に関する訴訟の多くが通常の民事裁判ではなく、特別な補償制度のもとで処理されることになった。これは、製薬会社がワクチンの副作用による訴訟リスクを回避できる仕組みであり、「もし本当に安全な製品なら、なぜ法的責任を免除する必要があるのか?」とRFK Jr.は疑問を投げかけている。
「ワクチンは科学の問題ではなく、ビジネスの問題になっている」
RFK Jr.の主張は、「ワクチンは純粋に公衆衛生のために開発されているわけではなく、企業の利益を最大化するためのビジネスになってしまっている」というものだ。
例えば、新型コロナワクチンを開発した製薬会社は、数十億ドル規模の政府支援を受けながら、巨額の利益を上げた。ファイザーやモデルナは2021年だけで数百億ドルの売上を記録し、経営陣は巨額のボーナスを手にした。一方で、ワクチンの長期的な安全性に関するデータは不十分であり、副作用の問題が浮上しても十分な説明がなされていない。
「ワクチンの安全性や効果に関する正確な情報を提供し、透明性を確保することこそが、政府と製薬業界の責任だ。しかし、現状では企業の利益が優先され、国民の健康は後回しにされている」とRFK Jr.は訴える。
「私はワクチンの正しいあり方を求めている」
RFK Jr.の主張は、単純な「反ワクチン論」とは異なり、「安全で信頼できるワクチンを求める」というものだ。
彼は「ワクチンの安全性を徹底的に検証し、利益相反のない透明なプロセスで承認する体制を整えなければならない」とし、「私が戦っているのは科学ではなく、腐敗したシステムだ」と明言している。
選挙戦への影響と世論の反応
RFK Jr.のこうしたスタンスは、一部の有権者から強い支持を受ける一方で、メディアや既存の政治勢力からは激しい批判を浴びている。大手メディアは彼を「陰謀論者」や「反ワクチン活動家」とレッテル貼りし、信用を失わせようとしている。
しかし、近年ではワクチン政策に疑問を抱く人々が増えており、特に政府の対応に不信感を持つ層からは「彼の言っていることには一理ある」との声も少なくない。
「自由と健康のために」──RFK Jr.の戦いは続く
RFK Jr.は、「国民が自分の体に何を取り入れるかを決める自由を持つべきだ」と強調し、ワクチン接種の義務化に反対する立場を貫いている。一方で、ワクチンを選択する権利そのものを否定しているわけではなく、「より安全で信頼できるシステムを作ることが重要だ」と訴えている。
彼の戦いは、単なるワクチン論争ではなく、企業と政府の癒着、科学の透明性、そして個人の自由をめぐるより大きな問題の一部なのかもしれない。
2024年の大統領選に向けて、RFK Jr.の声はどこまで届くのか。そして、彼の主張が今後のワクチン政策や製薬業界にどのような影響を与えるのか。その行方に注目が集まっている。