環境を蝕む農薬:ネオニコチノイド系農薬の危険性とその影響

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ネオニコチノイド系農薬は、この農薬は主に作物に害を与える昆虫の神経系に作用して害虫を駆除する化学物質の一種。ニコチンを基にした合成化合物で、1990年代に登場した。
ネオニコチノイド系農薬は、農作物の種子や葉に直接散布されたり、土壌に施用されて吸収されることが多く、その効果は長期間にわたるため農家に重宝されていた。しかし、残留性が高く、農作物を超えて周囲の環境や生態系に深刻な影響を与えることが問題視されてる。特に、ミツバチをはじめとする重要な授粉昆虫に対する悪影響が指摘されており、これが生態系全体に及ぶ影響を引き起こすことが懸念されてる。
増え続ける子どもの発達障害との関連が指摘されている殺虫剤のネオニコチノイド系農薬は世界各国では規制が進む一方、日本ではいまだに使用が禁止されておらず、むしろ使用が推奨される傾向にある。
この農薬は洗っても落ちず、加熱しても分解しない強力な性質を持つ。
2021年、ドイツの研究者たちは、ネオニコチノイドの一部が人間の神経細胞に悪影響を与える可能性があると発表し、特に子供の脳への影響を危惧している。
宮古島市の地下水に関する調査で、過去10年間で特別支援学級に通う児童が39人から422人へと急増したことが報告され、ネオニコチノイド系農薬の使用と児童数の増加に相関が見られたことが注目されている。
さらに、環境脳神経科学情報センターの実験によれば、ネオニコ系農薬はラットの発達期の神経細胞に直接影響を与えることが確認されており、人間を含む哺乳類の神経伝達に不可欠なタンパク質にも作用することが明らかになった。こうした知見から、農薬が子どもの発達に及ぼす影響への懸念が強まっている。
2007年春までに北半球から四分の一のミツバチが姿を消したとの報告があり、日本でも2000年代からミツバチの大量死とそれに伴う不足が問題視されている。
こうした生態系への影響の一因として、ネオニコチノイド系殺虫剤や農薬の使用が指摘されている。
EUでは2018年に3種類のネオニコ系農薬を原則使用禁止とし、2020年までにはほぼすべての主要ネオニコ系農薬の使用が事実上禁止となった。フランスは2016年に生物多様性法を制定し、ネオニコ系農薬の使用禁止を明文化した。また、韓国も2014年にEUに倣い3種の使用を禁止し、トルコも2018年に同様の措置をとっている。
アメリカでも2015年、環境保護庁(EPA)がネオニコ系農薬に対し、ミツバチに大きな影響を及ぼす可能性があるとして、新規や追加の登録を条件付きで停止する方針を発表した。
一方で、日本ではネオニコチノイド系農薬の使用が推進されており、そのうち7種すべてが依然として使用可能だ。さらに、2015年には残留基準が大幅に引き下げられた。例を挙げれば、ほうれんそうでは従来の13倍に緩和した。
日本の残留農薬基準値は、アメリカの数倍、EUの数十倍から数百倍に達するとされており、その基準が他国と比べて非常に緩いことが指摘されている。
ネオニコチノイド系農薬自体は1980年代に日本企業によって発明され、住友化学が中心的な製造メーカーとして世界各国に輸出している。住友化学は、EUに対して「規制措置は行き過ぎ」と反論する文書を発表し、世界各国の規制強化に反対の立場を取っている。
こうした背景の中で、日本政府が国民の生命や健康を守ることよりも、一企業の利益追求を優先している姿勢は、根本的な転換を迫られていると言わざるを得ない。
ネオニコチノイド系殺虫剤は、昆虫などの神経系に直接作用する。1993年には動物プランクトンが急激に減少し、これがエビ類の激減にもつながっている。同年は、ネオニコチノイド系殺虫剤が初めて使用され始めた年でもある。
さらに、宍道湖(島根県)では水性昆虫が減少した影響で、エサ不足によるニホンウナギやワカサギの激減が報告され、田んぼではトンボの減少も目立ち農薬による影響と関連している可能性が指摘されている。
日本の水道水からネオニコチノイド系農薬が高濃度で検出されている。特に田植えや野菜の作付けが集中する5月から7月にかけて検出値が上昇し、8月頃には水稲に対するカメムシ防除の影響でさらに増加する傾向が見られる。
ネオニコチノイド系農薬が散布された場合、作物などが吸収する割合はわずか5%に過ぎない。残りの95%は、環境へと流出してしまう。さらに、この農薬は残留性が非常に高く、通常数年にわたって土壌や水質に残るだけでなく、条件によっては十年以上にわたって影響を与え続けることがある。このような長期間にわたる残留性が、生態系への深刻な影響を与える原因となっている。
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