
身の回りにあるものを最大限に活用して暮らしに活かす知恵の中で、大麻は日本家屋の建材として使用されてきた。大麻の繊維を取り去ったあとの木質部分である「おがら」を屋根化粧と茅の折れを防ぐために茅葺屋根の下敷きに活用した。おがらは強く軽い。大小100棟余りの合掌作り集落として1976年には重要伝統的建造物群保存地区として選定され1955年には五箇山とともにに白川郷・五箇山の合掌造り集落として、ユネスコの世界遺産(文化遺産)に登録された白川郷の茅葺き屋根を下から覗き込むとたくさんの大麻を見ることができる。江戸時代に会津若松市と日光今市を結ぶ重要な道の宿場町として栄えた面影を色濃く残し、1981年に重要伝統的建造物群保存地区に選定された福島県の大内宿の茅葺き用の大麻は、文化庁の「ふるさと文化財の森システム推進事業」の一環として「鹿沼野州麻畑の苧殻(麻殻)」として指定されている。また、それらの屋根材としてだけではなく、藁と同じように、土壁や漆喰には、大麻の繊維くずである麻スサを石灰やフノリと練り合わせて活用してきた。近年では伝統建築の中だけではなく世界的にもエコ素材として注目を集めるヘンプクリートやヘンプブロック、ヘンプパネル、ヘンプ断熱材としての活用もはじまっている。