比べることで、なんとか生きてきた人へ―― 裁く席から降りるとき


もしあなたが、
強い言葉や、荒い態度、
怖がられる生き方に
どこか惹かれているなら。
それは、
あなたが乱暴だからでも、
悪い人間だからでもない。
弱く見えたくなかった
それだけの話だ。
あなたは、
分かっているはずだ。
本当に強い人間が、
どんな目をしているか。
本物の世界が、
どれほどの覚悟と代償を
必要とするか。
だから、
踏み込めなかった。
それは臆病ではない。
現実を知っていた
ということでもある。
それでも、
憧れは残る。
・声を荒げても許される
・説明しなくていい
・恐れられる側に立てる
そういう生き方が、
自分を守ってくれる気がする。
だから、
似た形をまねる。
言葉を強くする。
態度を大きくする。
上下をはっきりさせる。
それで、
なんとか立ってきた。
けれど、
あなた自身が一番分かっている。
それは、
借り物だ。
怖がらせている時だけ、
自分が消えずにすむ。
相手が黙っている間だけ、
安心できる。
だから、
静かな人が怖い。
何も言わず、
上下にも乗らず、
逃げも戦いもしない人。
その人は、
あなたを否定しない。
ただ、
あなたの武器を必要としていない。
それが、
一番つらい。
裁く席に座ると、
世界は単純になる。
強いか、弱いか。
上か、下か。
迷わなくていい。
考えなくていい。
でも、
その席は長く座るほど、
降りにくくなる。
降りたら、
何者でもなくなる気がするからだ。
もし最近、
・勝っても落ち着かない
・相手が黙っても満たされない
・強く振る舞うほど疲れる
そんな感覚があるなら。
それは、
壊れた証拠ではない。
もう、その席が合わなくなった
というだけだ。
ここから先は、
派手じゃない。
むしろ、
みっともなく感じる。
強くもなく、
怖くもなく、
評価もされない時間。
・言い返さない
・証明しない
・上下を作らない
そうすると、
中身がむき出しになる。
怖い。
空っぽに見える。
でも、
それが最初の「自分」だ。
あなたが本当に恐れているのは、
弱くなることじゃない。
何も飾れない状態で
それでも生きていけるのか
という不安だ。
裁く席から降りることは、
負けではない。
逃げでもない。
覚悟の種類が変わる
ということだ。
人を押さえつける覚悟から、
自分をごまかさない覚悟へ。
もし、
いま立ち止まっているなら。
それは終わりではない。
これまで選ばなかった、
一番怖くて、一番まっとうな道
の入口に立っているだけだ。
強くなくてもいい。
怖がられなくてもいい。
比べなくても、
あなたはここにいる。
それを知るところから、
やっと人生は
自分のものになる。
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