母親を自殺で亡くした息子はアヤワスカで救われた——RFK Jr.が語る癒やしの旅

アメリカの政界に深く根ざしたケネディ家の一員であり、2024年大統領選に無所属で立候補したロバート・F・ケネディ・ジュニア(RFK Jr.)。彼は、環境活動家や反ワクチン活動家としても知られる一方で、精神世界にも関心を寄せる一面を持つ。そんな彼が最近語ったのは、長男ボビー・ケネディ三世(Bobby Kennedy III)の深い悲しみと、その癒やしの過程についてだった。

母の突然の死と息子の苦悩

2012年、RFK Jr.の元妻であり、ボビー・ケネディ三世の母であるメアリー・リチャードソン・ケネディは、自ら命を絶った。メアリーは長年、うつ病に苦しんでおり、離婚後の生活の中で精神的な苦境に陥っていたと報じられている。母の死は、当時20代だったボビーにとって計り知れないほどの衝撃を与えた。

RFK Jr.は、息子が深い悲しみの中で自己破壊的な行動をとるようになり、アルコールやドラッグに頼ることもあったと明かしている。どれほど言葉を尽くしても、彼の心の傷を癒やすことはできなかったという。

アヤワスカとの出会い

そんな時、ボビーはアヤワスカ(Ayahuasca)という南米の伝統的な幻覚性飲料と出会った。アヤワスカは、アマゾンの先住民族が古来から儀式で使用してきた植物由来の飲み物で、DMT(ジメチルトリプタミン)という強力な幻覚作用を持つ成分が含まれている。近年では、PTSDやうつ病、トラウマの治療法として注目され、欧米のセレブリティや精神医療の分野でも関心が高まっている。

RFK Jr.によると、ボビーは南米のジャングルでアヤワスカの儀式に参加した後、劇的な変化を遂げたという。それまで心を閉ざし、怒りや悲しみに囚われていた彼が、母の死を受け入れ、自分自身を許し、前向きな人生を歩み始めることができたのだ。

アヤワスカがもたらす「癒やし」

アヤワスカは、一般的な抗うつ薬とは異なり、一度の体験が深い気づきや感情の解放を促すことがある。そのため、伝統的な精神療法の枠を超えた「スピリチュアルな治療」として評価されることも多い。ボビーの体験は、まさにその典型例だった。

RFK Jr.は「アヤワスカが彼を救ってくれた」と語り、従来の精神医療では解決できなかった深い悲しみを克服する手段として、その可能性に大きな期待を寄せている。一方で、アヤワスカは合法性や安全性に関する議論もあり、使用には慎重な判断が求められる。

ケネディ家と精神世界の探求

ケネディ家は政治と権力の象徴として知られる一方で、悲劇に見舞われることも多い家系だ。ジョン・F・ケネディ大統領やロバート・F・ケネディ上院議員の暗殺をはじめ、多くの家族が若くして命を落としている。その影響もあり、一部のケネディ家のメンバーは、従来の価値観を超えた精神世界への関心を深めているようだ。

RFK Jr.自身も、環境活動を通じて自然との調和を重視し、また自身の健康管理においても西洋医学にとらわれないアプローチを取ることで知られている。アヤワスカに対する肯定的な姿勢も、その延長線上にあるのかもしれない。

アヤワスカの未来と精神医療への影響

現在、アメリカをはじめとする多くの国でアヤワスカは規制されているが、近年の研究ではその治療効果が科学的に証明されつつある。特に、心的外傷後ストレス障害(PTSD)や薬物依存症に対する有効性が期待され、今後、精神医療の分野で新たな選択肢として認められる可能性がある。

ボビー・ケネディ三世の事例は、単なる個人的な体験談ではなく、精神的なトラウマや喪失と向き合う新たな方法として、多くの人々に希望を与えるものだろう。RFK Jr.の言葉を借りれば、「アヤワスカがもたらす癒やしの力は、これからの世界にとって重要なものになるかもしれない」のだ。

それは、政治や医療の枠を超えて、人類が精神の深奥に迫る旅の始まりなのかもしれない。