砂漠と生きる農業

―― 水で支配するか、土を育てるか

砂漠で農業を行うことは可能だ。
それは、もう証明されている。

巨大なスプリンクラー。
地下水をくみ上げ、円を描く農地。
短期間で育つ作物。

だが、ここで一つ問いが残る。

それは「砂漠と生きる農業」なのか。
それとも「砂漠に勝とうとした農業」なのか。

砂漠で起きた、二つの農業

20世紀後半、
サウジアラビアなどの国々は、
砂漠での大規模農業に成功した。

航空写真で見える、完璧な円。
センターピボット灌漑による農地だ。

地下深くに眠る水をくみ上げ、
一気に作物を育てる。

短期的には、成功だった。

だが、長くは続かなかった。

水位は下がり、
コストは上がり、
やがて多くの農地は使われなくなった。

作物は育ったが、土地は育たなかった。

水で支配する農業の限界

この方式の本質は、こうだ。

・水を大量に与える
・栄養を外から入れる
・管理で生産を維持する

これは
工業的農業であり、
水耕に近い発想だ。

水を止めた瞬間、
すべてが終わる。

土地には、
自立する力が残らない。

もう一つの選択肢

一方で、まったく違う思想の農業がある。

それは
「砂漠を変えようとしない」農業だ。

代表例が
イスラエル

イスラエルは
砂漠を森に戻そうとはしなかった。

・水は最小限
・与える場所を限定
・土は「作るもの」

砂漠でも生きられる
構造を作った。

それでも、
この方法にも限界はある。

水への依存は、完全には消えない。

「砂漠と生きる農業」とは何か

では、
本当の意味で
砂漠と生きる農業とは何か。

それは
水を消費する農業ではなく、
土を育てる農業
だ。

鍵は、
「何を植えるか」ではない。

「どの順で、生き物を入れるか」だ。

砂漠と生きる、正しい順番

① 草 ― 砂を止める

最初に必要なのは、作物ではない。

草は
・砂を飛ばさず
・日差しをやわらげ
・地表を守る

収穫は目的ではない。
環境を整えるための存在だ。

② 麻 ― 土を動かす

次に入るのが、麻。

麻は
・深く根を張り
・地中をゆるめ
・刈って戻せば、有機物になる

麻は作物ではない。
土を作るための装置だ。

ここで、砂は変わり始める。

③ 木 ― 環境を固定する

最後に木を入れる。

木は
・風を止め
・日かげを作り
・落ち葉を落とす

木は、
できた土を守る柱だ。

作物は、いちばん最後

多くの失敗は、ここにある。

最初から作物を植える。
水と肥料で育てる。

それは
「育ったように見える」だけだ。

土地は、何も学んでいない。

作物は
土ができてから来る「客」であり、
土を作る「職人」ではない。

砂漠は、文明の姿勢を映す

砂漠は、正直だ。

・水を力で押しつければ、枯れる
・時間をかけて土を育てれば、応える

砂漠は
人間の短気さも、
忍耐も、
そのまま映す。

結論

砂漠と生きる農業とは、

・水で支配しない
・短期の成果を求めない
・土を次の世代に渡す

農業だ。

砂漠を緑にすることはできる。
だが、
土地を裏切らない緑化は、
土を育てた場所にしか残らない。

砂漠は敵ではない。
設計を間違えた文明の、鏡だ。