砂漠の砂が土に変わるとき、何が起きているのか

―― 草・麻・木の下で進む、見えない科学

砂漠の緑化を語るとき、
多くの記事は「水」「技術」「作物」に焦点を当てる。

だが、砂が土に変わる現場では、
まったく別のことが起きている。

それは、
目に見えないレベルでの構造変化だ。

砂と土の決定的な科学的ちがい

砂と土の差は、栄養量ではない。
構造だ。

砂の特徴

・粒が大きく、ばらばら
・水がすぐ抜ける
・空気は多いが、安定しない
・分解が起きにくい

土の特徴

・細かい粒が集まり、かたまりを作る
・水と空気を同時に保つ
・有機物が分解され続ける
・生き物が定着する

この「粒が集まる構造」を
団粒構造という。

土とは、
団粒構造をもった砂の集合体にすぎない。

団粒はどうやって生まれるのか

重要なのは、
「何を入れるか」ではなく
「何がつなぐか」

団粒を作る主役は、
植物そのものではない。

根が出す“見えない材料”

植物の根は、
栄養を吸うだけの器官ではない。

根は、土中に
・糖
・有機酸
・粘性物質

を出している。

これは
根圏分泌物と呼ばれる。

この分泌物が
・砂粒の表面に付着し
・他の粒を引き寄せ
・粒と粒を結びつける

土づくりは、
ここから始まる。

分解が起きると、砂は変わる

有機物は、そのままでは土にならない。

分解が起きるとき、
有機物は
・粘性の高い物質
・安定した炭素化合物

に変わる。

これらが
砂粒を包み込み、
崩れにくいかたまりを作る。

この状態になると、
水は
・一気に流れ落ちず
・ゆっくり保持される

砂の性質が、変わる。

なぜ「草」から始めるのか

草は
・根の量が多い
・成長が早い
・地表を覆う

これにより
・地温が下がる
・水分が保たれる
・分解が止まらない

草は、
分解と構造形成の舞台を作る装置だ。

なぜ「麻」が決定打になるのか

麻の根は
・深く
・直線的に
・大量に

地中へ入る。

これにより
・水と空気の通路ができ
・深層まで分解が進む

さらに
刈り取って戻すことで
・炭素が土中に残る

これは
炭素貯留と構造形成を同時に進める設計だ。

木が「最後」である理由

木は
・根が太く
・更新が遅い

土ができる前に入れると
・根が広がらない
・水を奪う

土ができた後に入れると
・落ち葉が供給され
・構造が固定される

木は
完成した土を守る存在であって、
土を作る初期装置ではない。

なぜ栄養水だけでは土にならないのか

栄養を溶かした水は
・植物を育てる
・しかし構造を残さない

分解も
粒の結合も
進みにくい。

水耕は
生命を維持する技術であって、
土を生成する過程を省略している

科学的に見た結論

砂が土になる条件は、はっきりしている。

・根が土中を動く
・有機物が分解され続ける
・粒を結ぶ物質が生まれる
・それが毎年くり返される

草 → 麻 → 木
この順番は、
生態学的にも、物理的にも合理的だ。