Mr. Beastの約30億円植林は、なぜ「6%」しか残らなかったのか

― PBS調査が示した現実と、「麻と一緒に植える」という別の答え ―

2019年、MrBeast
「2,000万本の木を植える」という、きわめて象徴的な目標を掲げた。

この挑戦は瞬く間に広がり、
YouTuberや科学コミュニケーターが協力し、
約2,000万ドル(約30億円) という巨額の資金を集める。

動画では、
MrBeast自身が 最初の2000本を植える姿 が強調され、
このプロジェクトは
「善意と行動力が世界を変えた成功例」として語られた。

だが数年後、
PBS の番組 Weathered
NOVA の調査によって、
その「結果」が静かに検証されることになる。

PBSが現地で確認した、動かしようのない数字

PBSの取材班は、
MrBeastが動画内で
「少なくとも2000本植えた」とされる州立公園を訪れ、
実際に現地で本数を数えた。

その結果は、次の通りだった。

・植えられたとされる本数:約2000本
・数年後に確認できた本数:約118本
・生存率:約6%

これは
・噂
・推測
・反対派の誇張

ではない。

PBS番組内で、実際にカウントされた実測値である。

何が間違っていたのか?「木を植える」ことと「森をつくる」ことの混同

PBSとNOVAが一貫して指摘していた問題は、
資金不足でも、努力不足でも、善意の欠如でもない。

番組内で語られた核心は、次の一文に集約される。

・“It wasn’t about the forest, it was about the trees.”
・「問題は“森”ではなく、“木”だけを見ていたことだった」

つまり、
森という仕組みを作らず、木だけを並べてしまった
という構造的な失敗だった。

若い森は、実は「炭素を出す」

PBSの番組では、
多くの人が誤解している事実が、科学的に示されている。

・若い森林は
 最初の約20年間、炭素吸収源ではなく
 炭素排出源(net carbon source) になる

・理由は
 土壌呼吸
 枯死した有機物の分解
 若木の光合成量の少なさ

つまり、

・「若い木は成長が早い=すぐCO₂を減らす」
という理解は、科学的には正しくない

なぜ2000本の木は、ほとんど生き残れなかったのか

PBSが示した原因は、はっきりしている。

・成熟した森が持つ
 「日差しを和らげる力」がなかった
・地表の水分を保つ
 「根と落ち葉の層」がなかった
・土壌が乾き
 微生物ネットワークが回復していなかった

そこに追い打ちをかけたのが、
2021年の異常気象だった。

・現地は
 約51℃(124°F) に達するヒートドームに襲われた
・PBSは
 「これがMrBeastの木を殺した可能性がある」
 と、番組内で明確に述べている

若木だけが露出した環境では、
極端な熱波に耐えられなかった。

ここで浮かび上がる「麻(ヘンプ)」という選択肢

PBSの番組内で
麻(ヘンプ)が直接言及されることはない。

しかし、
PBSとNOVAが示した「成功の条件」 を並べると、
麻という植物が、極めて相性の良い存在であることが見えてくる。

PBSが示した「若木が生き残る条件」

番組内で示された条件は、次の通りだ。

・初期の強い日差しを防ぐこと
・地表の乾燥を防ぐこと
・土壌の菌と構造を回復させること
・人の継続的な管理に依存しないこと

麻(ヘンプ)が果たせた可能性のある役割

麻は、次の特徴を持つ。

・成長が非常に早い
・1年草で、必ず枯れて土に戻る
・深く細かく根を張り、土をほぐす
・雑草には勝つが、木を支配しない

もし植林の初期に、

・麻を高密度で先に育て
・その間に在来種の木を点在させて植えていれば

麻は

・日差しと風を先に受け止め
・地表温度を下げ
・水分を保ち
・土壌の菌と水の通り道を回復させ
・1年後には枯れて、天然のマルチになる

つまり
人が管理しなくても機能する「場」を、
先に作れた可能性が高い。

なぜこの設計は選ばれなかったのか

理由は技術ではなく、構造にある。

・植林は「本数」で評価される
・草はKPIにならない
・1年目に森らしく見えない
・法規制とイメージの問題

結果として、

・数字で管理される善意

・生態系が必要とする時間

が、致命的に噛み合わなかった。

6%という数字が本当に教えていること

この話は
「MrBeastは間違っていた」という物語ではない。

PBSとNOVAが示した結論は、むしろこうだ。

・木を植えること自体は重要
・だが
 既存の森を守ることの方が、はるかに効果が高い
・そして
 森の複雑さを無視した大量植林は、結果を残しにくい

まとめ

・MrBeastの植林は
 約30億円規模の善意プロジェクトだった
・PBSは実測で
 「2000本中118本(約6%)」を確認した
・原因は善意不足ではなく、設計の問題
・若木は約20年間、炭素排出源になり得る
・森は「管理」ではなく「構造」で生き残る
・麻のような先行植物を使えば
 人の管理なしでも生存率は上がった可能性が高い

木を生かしたかったなら、
木だけを主役にしてはいけなかった。

それは
森の話であり、
環境活動の話であり、
そして
善意が失敗する構造の話でもある。