思考と体調が同時に整う食べものは、多くない

―― 完全食にもっとも近い種・麻の実の構造

集中力が続かない。
気持ちの切り替えがむずかしい。
体は疲れているのに、頭は休まらない。

こうした不調は、年齢や性格の問題ではない。
脳と体の材料不足が、静かに進んでいる可能性がある。

その「材料」として、今あらためて見直されているのが麻の実だ。

麻の実は、油であり、たんぱく源である

麻の実が特別なのは、
「一部の栄養が多い」食品ではなく、
人の構造そのものに合った栄養バランスを持つ点にある。

脳を作る脂質 ― オメガ3脂肪酸

麻の実には、必須脂肪酸であるオメガ3が豊富に含まれている。

オメガ3は、

・脳神経細胞の膜を構成する
・神経伝達を円滑にする
・慢性的な炎症を抑える

といった働きを持つ、脳の基礎素材だ。

現代の食生活では、
加工食品や植物油の影響でオメガ6が過剰になりやすく、
脳が常に「軽い炎症状態」に置かれている。

麻の実は、
その偏りを自然な形で是正する、数少ない食品のひとつである。

必須アミノ酸をすべて含む、植物性たんぱく

麻の実のたんぱく質は、
人間が体内で合成できない必須アミノ酸をすべて含む完全たんぱくだ。

これは、

・筋肉
・内臓
・ホルモン
・神経伝達物質

の材料として、極めて効率がよい。

さらに、

・消化に負担をかけにくい
・腸内環境を乱しにくい
・動物性に比べて炎症を起こしにくい

という特徴もある。

「脳にも体にもやさしいたんぱく源」として、
非常に理にかなっている。

麻の実が評価される理由は「刺激しない」こと

多くの健康食品は、
「効く」「変わる」「上がる」ことを売りにする。

一方、麻の実は違う。

・覚醒させない
・興奮させない
・一時的な高揚を作らない

その代わり、
神経・血管・腸・細胞膜を、静かに支え続ける。

これは高齢者だけでなく、
情報過多・ストレス過多の現代人にとって、
むしろ重要な性質だ。

麻の実を食べ続けてきた人々

こうした麻の実の特性を、生活レベルで体現してきた地域がある。
中国・広西チワン族自治区の巴馬だ。

巴馬は長寿者が多い地域として知られているが、特別な医療や健康法があるわけではない。人々の暮らしはきわめて質素で、過度に加工された食品や糖分をほとんど取らず、血糖値や内臓に強い負荷をかけない生活が保たれてきた。日常的に体を動かし、日照と睡眠のリズムが安定していることも、自律神経や代謝を乱しにくい要因となっている。

その食生活の中心にあるのが、精製されていない穀物や野菜、そして麻の実(火麻仁)である。刺激の強い食品や一時的な栄養補給に頼るのではなく、体の基礎を静かに支える食を、毎日の習慣として続けてきただけだ。

これは「巴馬だから特別」という話ではない。麻の実という食文化が、人の構造や生活リズムに合っていた――その結果が、長い時間をかけて健康という形で現れただけなのである。

麻の実は「新しい健康法」ではない

麻の実はスーパーフードではない。
未来の食でもない。

むしろ、
人類が長い時間をかけて選び残してきた基本食に近い。

脳と体は別々に存在しているのではなく、
同じ食べもので作られている。

その前提に立ったとき、
麻の実は、極めて静かで、理にかなった選択肢となる。