ドクター・ドレーが“チョイス”を変えた日

そんな空気を、根本から変えたのが『The Chronic』だった。ドクター・ドレーは、N.W.A脱退後のソロデビュー作として、あえて「大麻文化」をタイトルに据えた。この決断は、ヒップホップの“ドラッグ語彙”を根底から塗り替えるほどの影響力を持った。音楽的には、Pファンクやソウルの影響を受けた「G-Funk」スタイルを打ち出し、スムーズでメロウなビートが、“ハイ”な感覚と抜群に合致していた。そして歌詞は、Snoop DoggやDaz Dillingerら若手をフィーチャーしながら、「吸ってることを誇る」「ライフスタイルとして肯定する」という新しい語り口を確立した。
「Nuthin’ But a G Thang」や「Let Me Ride」は、ライターの火を灯す音、吸引音、煙に包まれる感覚をサウンドで“吸わせる”構造をもっていた。
Sign in to your account