ヘンプカープロジェクト――産業大麻が拓く未来

ヘンプカープロジェクトは、産業用大麻(ヘンプ)を活用した持続可能なモビリティ社会の実現を目指す取り組みである。成長が早く環境負荷が少ないヘンプの特性を生かし、自動車の素材や燃料として応用することにより、循環型社会への転換を促すものである。

 

なぜヘンプなのか

ヘンプは短期間で成長し、農薬を必要とせず、土壌の浄化作用を持つ。また、強靭かつ軽量な繊維は自動車部材に適しており、燃費向上と二酸化炭素排出量の削減に寄与する。1930年代、ヘンリー・フォードが植物由来素材で車両を開発した歴史に遡るヘンプカーの理念は、現代において新たな意義を帯びて蘇りつつある。

日本における挑戦――若者たちの日本縦断プロジェクト

2001年7月、アメリカでヘンプオイル燃料による大陸横断プロジェクトが始動。この情報は日本にも届き、インターネットのメーリングリスト「hemp-info」を通じて広まった。これに触発された若者たちが、日本版ヘンプカープロジェクトを企画。地方自治体や企業、産業大麻問題に取り組んできた関係者らの支援を得て、計画を具体化させた。

中心メンバーは、縄文エネルギー研究所の中山康直氏(実行委員長)、NPO法人ヘンプ普及協会の井野口貴春氏(副委員長)、日本麻協会の岡沼氏、事務局の赤星栄志氏らである。中山氏は、自らドライバーとしても参加し、現場をリードした。

困難と挑戦

準備段階では課題が山積した。ディーゼル車がヘンプオイルで本当に走行可能か、全国縦断に耐えられるか、資金調達の目途は立つのか。議論を重ねる中、新潟麦酒の宇佐美社長がディーゼルキャンピングカーを提供し、Industrial Hemp Clubとヘンプ・レストラン麻が合計2600リットルの燃料を寄付、染谷商店が燃料精製を担った。

そして2002年4月、北海道滝川市を出発点に、総走行距離1万3000キロに及ぶヘンプカー日本縦断プロジェクトがスタートした。

全国各地への広がり

各地で開催された講演会や勉強会では、嗜好品目的ではなく、環境、健康、精神文化に関心を寄せる層が参加の主流となった。ヘンプカーは神社仏閣も巡り、注連縄や鈴紐に用いられる大麻の実態調査を実施。調査の結果、大麻使用は3~4割に留まり、多くがビニール製に置き換えられていた。中山氏は、戦後急速に変容した日本文化の現実に直面したと述懐している。

プロジェクトは同年9月に沖縄でゴールを迎え、船井総研主催の「船井ワールド」にて成果報告を行った。

その後の展開

2011年には、北見市の産業用大麻特区認定3周年を記念し、道内18か所で講演会やマルシェを実施。産業用大麻普及に関する署名2041名分を高橋知事に提出した。この動きは、2012年の「ヘンプネット」設立へと繋がり、北海道における産業用大麻復活への流れを確かなものとした。

ヘンプカープロジェクトは2019年以降も継続され、各地で啓発イベントが開催されている。

窪塚洋介氏の賛同

ヘンプムーブメントには、俳優・アーティストの窪塚洋介氏も賛同している。環境問題や意識改革への関心を持つ窪塚氏は、ヘンプの有用性と精神性を広める活動に積極的に関わり、若い世代への橋渡し役を果たしている。

結び

持続可能な社会を目指すうえで、ヘンプが持つ可能性は計り知れない。若者たちの情熱から始まったヘンプカープロジェクトは、今なお進化を続け、日本社会に新たな選択肢を提示し続けている。